FUTURE DESIGN and NAVI
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「ハコダテ・スローモール2015プロジェクト」のプランは、プロジェクトメンバー以外にも多くの方に取材協力をいただいた。
ここでは、公共交通の視点から黒川和美・法政大学教授、都市再生の視点から藻谷浩介・日本政策投資銀行地域企画部参事役、そして行政の視点から國安秀範・函館市企画部計画調整課主査、長谷山裕一・函館市企画部政策調査課主査のコメントをご紹介する。
 
 
■法政大学
 経済学部教授
 黒川 和美 氏

 
 人口の減少が問題ということですが、まずどんなことがあっても日本の人口は減少します。そこを前提に考えた方がいいですね。
 もう一つは産業構造として、日本経済全体が製造業で何かを考える時代ではまったくなくなってしまった。現在、日本の産業に占める製造業の割合は15%以下で、もっと減るかもしれないと言われています。では函館には何があるかというと、それは明らかに観光とおいしい食べ物という「非日常」です。それはまさに揃っているし、飛行場も近い。これが函館の置かれている状況の基本です。
 函館のすごいところは、外から来る観光客の圧倒的な多さです。そこで考えられるのは、まず冬でも歩ける街づくり。これはヨーロッパの北方の都市が参考になります。僕が面白いと思うのは、リーズというイギリスの工業都市のアーケードです。アーケードといってもかなり大型で「パサージュ」(アーケードに覆われた商店街)のようなものですが、屋根がついていて内部がエアコンディションされている。
 リーズはもともと二階建てのユニークな路面電車で有名だった街なんですが、その路面電車をやめ、駅から1?四方をトランジットモールにして自動車を入れなくした。周辺に駐車場をいっぱい作って、中心街を屋根で覆ったんです。内部は3階建てで、オープンカフェなどもある。寒い国は、こうしないと年間の半分が使えなくなるわけです。
 通路はある程度密閉して空調を行い、冬でもお店をぐるぐる歩き回ることが楽しいと思えるような環境を用意する。一方、車は郊外に置き、電車で都心を周遊するパーク・アンド・ライド方式を採用して、中心街はLRTなどの公共交通を使うということは十分考えられると思います。
 函館は独特の地形ですから、これまでも工夫はされていると思います。しかし一点中心の都市の場合、交通は放射状形の交通システムになっちゃうんです。ただ函館は、いちばん端が中心という独特の角度の一点集中になっているので、通常の理論が役に立たない。地域の人々が独特の工夫をこらす余地は十分あると思います(談)。

 
■日本政策投資銀行
 地域企画部参事役
 藻谷 浩介 氏

 
 集客交流事業に関する旧来の理論によると、成功の条件は第一に優れた地域資源があること、第二に交通の便がよいこと、とされています。西部地区はどうかといえば、資源は豊富で、羽田から函館空港までは1時間くらい、空港からは早ければ15分という好立地です。「繁栄の鍵は地域資源+交通」という理論が本当ならば、栄えてなければおかしい街なんです。
 そもそも函館、大沼周辺は北海道の中でも特に風光明媚だし、晴れているときの函館山の夜景や駒ヶ岳の全景は一度見たら忘れられません。本物の温泉が豊富に出るし、魚はうまいし、道央と離れているために逆に函館周辺だけのツアーも組まれやすい。要するにあらゆる面で恵まれているんです。
 ところが現状は、日本の30万都市の旧市街地で西部地区ほど空洞化している場所はありません。理由は、古くからの地権者が自分の地区の資源が何たるかを理解できていないことにあります。独自の良さがわからずに、ありきたりの街と同じようなマンション開発をしたがる。せっかく倉庫を観光施設に生かしても、中ではどこでも買えるような土産を売ってたりする。そのため、一度見てみようという観光客はいても、その観光客がリピーターにならないのです。
 サンフランシスコのロシアンヒルズ(市街地で唯一、九十九折の街路のある丘の上の住宅地)は、よく映画にも登場する街ですが、私は、西部地区が目指すべきはこれだと考えます。丘の町の住宅地の景観が観光資源なのです。ロシアンヒルズには中高層建築など皆無です。沿道には、地区の景観を守りたいという人が住み、花を飾って暮らしている。住む人のおしゃれなライフスタイルがにじみ出て見える街。そうなれば皆が行きたがりますし、逆にそうしなければリピーターはつきません。おしゃれな人が住めば、おしゃれな喫茶店もできますしね(笑)。
 神戸の北野地区にも言えることですが、おしゃれな街にふさわしい住宅機能を作り込むことで、日常的にそこで過ごしたい人が定着し、それが景観にも影響する。山のふもとで寒さから守られ、温泉があり、食べ物がおいしい西部地区は、それができる国内でも数少ない場所だと思います(談)。


 
■函館市企画部
 計画調整課 主査
 國安秀範 氏


 
 
■函館市企画部
 政策調査課 主査 長谷山裕一 氏



 
 「西部地区の空洞化は、簡単にいうと住む場所でなくなってしまったということが一つの要因だと思います」と函館市企画部政策調査課の長谷山裕一主査は語る。「西部地区は空家が非常に多い。そこで、空家空地相談室を市役所に設け、複雑な権利関係を解きほぐし、流通を促進しています。また、指定のエリアに新婚家庭が入居する場合は、家賃を補助するなど、都市再生施策を推進しています」
 こうした施策に加え、昨年にはワークショップ形式の「ハコダテ・スミカプロジェクト」や学識経験者を含めた「西部地区まちの将来像会議」を設けて報告書を作成したり、「西部地区(都市景観形成地域)のまちづくり構想案」をまとめている。
 「交通面でいうと、新幹線の開通は大きな影響が出ると思います」と計画調整課の國安秀範主査は語る。「まず観光客が増えるということ。青森の八戸で開業したときもずいぶん実績、数字が上がっています。東北圏はもちろん、北関東からもわざわざ羽田に戻って来る必要がなく、短時間で来ることができるので、そういう方々の観光に対する見込み客数は期待できます」
 西部地区だけでなく、青森や小樽、札幌と結びつけた広域観光という面でどう魅力をつけるかが課題という。
 「公共交通の体系という面では、函館駅を要にして道路整備も行っていますし、電車線は函館駅を起点に湯の川まで伸びています」と國安主査。「発想としては、今はやりのLRTで西部地区から空港へアクセスする案も出ていますが、現状では提案の段階です。ただ、新幹線駅ができることで、函館観光の拠点の再整備をしなければ、ただの通過点になってしまいます」
 その意味で西部地区に魅力を持たせ、人を呼び込むことが必要になる、と國安主査は考えている。そこで函館の街の魅力を歩いて知ってもらうことを目標にした「ハコダテ・スローモール2015プロジェクト」は、体験型の観光という点で大いに貢献できそうだ。
 「長期のスパンで考えて建物だけ残しても、映画村のようになって現在のように観光客は来ないのではないだろうかと心配します」と長谷山主査は語る。「そこに人が住みながら、暮らしがありながら、そしてこの風景や建物や街にこだわりながら暮らしていかないと、この街のルーツとなるものも失われいくだろうし、それは市の体力も失われていくことを意味していると思います」

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